売上向上のアプローチ(経営力アップ①)
第1回 売上高を上げるためのアプローチ
多くの中小商店が売上低迷に悩む昨今ですが、どうすれば販売不振から抜け出せるのか、 その打開策のポイントについて考えてみましょう。
まず取組み方には大別して次の二つの方法があり、ともに欠かせない大切な要件となります。
① 時代のニーズに合った「特色ある売り方」を工夫する戦略的対応
② 売上高を構成する「客数・客単価」などの改善を追求する戦術的対応
1 新しい売り方で独自の経営スタイルを打ち出す
●自分の都合よりお客本位の売り方が先決
"販売なくして事業なし"といわれるように、経営の中心は販売つまり売上です。売上高の大小はお客による愛顧と支援の結果ですから、お客の期待や好みに合った売り方の工夫が基本となります。
売り方とは、マーケテイング(販売活動)の七つの要素の組合わせと考えることができるでしょう。
<売り方開発のための7つの要素>
売り方=客層×品揃え×価格帯×品質×展示陳列×接客応対×付加サービス
そこで、各要素をよく見直して自店の強み(長所)と弱み(短所)をつかみ、どこに店づくりの重点をおくのか明確にしていかなければなりません。
まず、商圏内の消費者と競合店をよく観察して客層を絞り(または広げ)、誰に何をどんな価格で提供するのか、商品グレードは大衆品か高級品かなどはっきりさせます。
「売りたい商品」と「見せる商品」のメリハリある展示陳列や照明の演出、接客応対は対面販売かセルフサービスかそれともセミセルフか。また電話受注、配達、サービス券、長時間営業など、お客に喜ばれるサービスはどうするのか。
自店が得意とする分野の幾つかの要素に的を絞り、特長ある新しい売り方に変えて積極的にお客に訴え、支持を広げていく努力が必要となるのです。
●便利性提供型か生活提案型か、経営スタイルの確立が決め手
新しい売り方の開発と方向はまた、「顧客満足」「地域社会の信頼性」「自店の成長」といった社会的な尺度や、5~10年先の店の将来像(ビジョン)に沿った内容と店づくりが望まれ、それが新しい経営スタイルとなります。
例えば価格、接客サービスよりも近場の立地条件と品揃え、さらに深夜営業など時間・場所・品揃えの便利性提供に重点をおくコンビニ店。
グルメの食卓(食品館)や魅力的な服飾ファッション(ブテイック)、快適な住空間(インテリアショップ)を演出する生活提案の経営スタイル。
商品の用途別に特定分野の豊富な品揃えと商品知識を誇る専門店型、付加価値が高い加工総菜や修理サービスの加工販売型、日用雑貨百円ショップの低価格訴求型など経営スタイルは多様です。
こうして、新しい売り方の発想や自身の経営センスから独自の経営スタイルを打ち出し、その考え方(コンセプト)に沿って個性的で魅力ある店づくりを進めることが、来客促進と売上回復の根本的方策となるのです。
2 売上高を上げる実践的テクニック
●「売上高=客数×客単価」の考え方と実践
売上高をいろいろな要素に分解してみると、今まで気づかなかった新しい着眼点が発見できます。こうして、合理的かつ体系的に実践ポイントを押さえ、できる所から着実に取組むことが売上改善の効果的な方法なのです。
まず、売上高=客数×客単価ですから、「客数(購入客数)か客単価(客あたり売上高)」を増やせば売上高は必ず向上します。そこでさらに、客数はどうすれば増えるか、客単価(=購入点数×平均商品単価)はどうすれば上がるか、それぞれ固有の要因を明らかにして有効な手を打つのです。
「商圏人口」(商圏拡大か人口増加)⇒ 来街者数(地域イベント、駐車場)⇒ 「店前通行量」(商店街活性化、道路整備)の関係から、お客を呼ぶためには街の魅力や店舗のイメージアップ、来街アクセス条件の充実が求められます。
また商圏深耕による流出防止の努力で、来街者を増やすことも選択肢の一つとなるでしょう。
次に店前通行量⇒ 「入店客数」⇒ 購入客数の関係から、店に入る客を増やすには「新規客」の誘導(売り方、店頭の魅力、便利性、広告宣伝)と併せて、「固定客」の反復利用(顧客名簿の活用、サービス券、親切な接客・相談)を促す対策が欠かせません。
さらに、入店客のうち実際に買物をしてくれる購入客を多くするには、購買意欲を刺激するような雰囲気づくり(売れ筋商品とテーマ陳列、わかり易い商品説明)が肝要となります。
一方、客単価を上げる方法は購入点数の増加(売出し、まとめ買い、関連商品、生活提案、客動線)か、商品のグレードアップが本筋といえるでしょう。
低価格指向が一般化している現在、特別の事情がないかぎり値上げは客ばなれの危険をともないます。仕入れコストや営業経費を節約して割安感のある価格で提供することが、顧客サービスと社会貢献につながると考えるべきです。
●「売上高=商品回転率×商品在庫量」の考え方と応用
売上高を別の角度からみると、商品回転率と在庫高(量)で決まることがわかります。
商品回転率は売れ行きの速さですから、足の速い商品または購買頻度の高い商品の手持ち在庫を増やせば、売上は増加します。
つまり、売れ筋商品を的確につかみ、または死に筋商品を極力発見して退治し、売れ筋関連の補完商品を拡大することが商売繁盛のコツというわけです。
上手な品揃えと在庫管理が、販売力を大きく伸ばすことを知らなければなりません。
●「売上高=坪効率×売場面積」の考え方と応用
売上高はまた、坪効率(坪あたり売上高)と売場面積とに分解することができます。したがって売上拡大のためには、坪効率を伸ばす努力とともに、売場面積を広げる工夫が大切です。
業種業態や立地条件(繁華街、住宅地、ショッピングセンター)などにより坪効率 は異なりますが、限界に近いのであれば売場の拡張、支店の開設、空店舗の取得などを前向きに考えたいものです。
坪効率は売場の使い方、陳列する商品量や演出方法、お客の店内誘導などにより改善することができます。また店員の守備範囲が広がれば、人の作業能率も向上するはずです。












