経営力アップ

2012/04/10

売上向上のアプローチ(経営力アップ①)

 第1回 売上高を上げるためのアプローチ
 
多くの中小商店が売上低迷に悩む昨今ですが、どうすれば販売不振から抜け出せるのか、 その打開策のポイントについて考えてみましょう。
 
まず取組み方には大別して次の二つの方法があり、ともに欠かせない大切な要件となります。
① 
時代のニーズに合った「特色ある売り方」を工夫する戦略的対応
② 売上高を構成する「客数・客単価」などの改善を追求する戦術的対応

 新しい売り方で独自の経営スタイルを打ち出す
●自分の都合よりお客本位の売り方が先決
 
 "販売なくして事業なし"といわれるように、経営の中心は販売つまり売上です。売上高の大小はお客による愛顧と支援の結果ですから、お客の期待や好みに合った売り方の工夫が基本となります。
 
売り方とは、マーケテイング(販売活動)の七つの要素の組合わせと考えることができるでしょう。

 
 
<売り方開発のための7つの要素>
 売り方=
客層×品揃え×価格帯×品質×展示陳列×接客応対×付加サービス

   
そこで、各要素をよく見直して自店の強み(長所)と弱み(短所)をつかみ、どこに店づくりの重点をおくのか明確にしていかなければなりません。
   
まず、商圏内の消費者と競合店をよく観察して客層を絞り(または広げ)、誰に何をどんな価格で提供するのか、商品グレードは大衆品か高級品かなどはっきりさせます。

 
「売りたい商品」と「見せる商品」のメリハリある展示陳列や照明の演出、接客応対は対面販売かセルフサービスかそれともセミセルフか。また電話受注、配達、サービス券、長時間営業など、お客に喜ばれるサービスはどうするのか。
 
 自店が得意とする分野の幾つかの要素に的を絞り、特長ある新しい売り方に変えて積極的にお客に訴え、支持を広げていく努力が必要となるのです。

 ●便利性提供型か生活提案型か、経営スタイルの確立が決め手
 新しい売り方の開発と方向はまた、「顧客満足」「地域社会の信頼性」「自店の成長」といった社会的な尺度や、5~10年先の店の将来像(ビジョン)に沿った内容と店づくりが望まれ、それが新しい経営スタイルとなります。

 例えば価格、接客サービスよりも近場の立地条件と品揃え、さらに深夜営業など時間・場所・品揃えの便利性提供に重点をおくコンビニ店
 グルメの食卓(食品館)や魅力的な服飾ファッション(ブテイック)、快適な住空間(インテリアショップ)を演出する生活提案の経営スタイル。
 商品の用途別に特定分野の豊富な品揃えと商品知識を誇る専門店型、付加価値が高い加工総菜や修理サービスの加工販売型、日用雑貨百円ショップの低価格訴求型など経営スタイルは多様です。

 こうして、新しい売り方の発想や自身の経営センスから独自の経営スタイルを打ち出し、その考え方(コンセプト)に沿って個性的で魅力ある店づくりを進めることが、来客促進と売上回復の根本的方策となるのです。

 売上高を上げる実践的テクニック 
●「売上高=客数×客単価」の考え方と実践Img_0001



 
売上高をいろいろな要素に分解してみると、今まで気づかなかった新しい着眼点が発見できます。こうして、合理的かつ体系的に実践ポイントを押さえ、できる所から着実に取組むことが売上改善の効果的な方法なのです。

 
まず、売上高=客数×客単価ですから、「客数(購入客数)か客単価(客あたり売上高)」を増やせば売上高は必ず向上します。そこでさらに、客数はどうすれば増えるか、客単価(=購入点数×平均商品単価)はどうすれば上がるか、それぞれ固有の要因を明らかにして有効な手を打つのです。


 「商圏人口」(商圏拡大か人口増加)⇒ 来街者数(地域イベント、駐車場)⇒ 「店前通行量」(商店街活性化、道路整備)の関係から、お客を呼ぶためには街の魅力や店舗のイメージアップ、来街アクセス条件の充実が求められます。
 
また商圏深耕による流出防止の努力で、来街者を増やすことも選択肢の一つとなるでしょう。

 
次に店前通行量⇒ 「入店客数」⇒ 購入客数の関係から、店に入る客を増やすには「新規客」の誘導(売り方、店頭の魅力、便利性、広告宣伝)と併せて、「固定客」の反復利用(顧客名簿の活用、サービス券、親切な接客・相談)を促す対策が欠かせません。
 さらに、入店客のうち実際に買物をしてくれる購入客を多くするには、購買意欲を刺激するような雰囲気づくり(売れ筋商品とテーマ陳列、わかり易い商品説明)が肝要となります。

 一方、客単価を上げる方法は購入点数の増加(売出し、まとめ買い、関連商品、生活提案、客動線)か、商品のグレードアップが本筋といえるでしょう。
 低価格指向が一般化している現在、特別の事情がないかぎり値上げは客ばなれの危険をともないます。仕入れコストや営業経費を節約して割安感のある価格で提供することが、顧客サービスと社会貢献につながると考えるべきです。

●「売上高=商品回転率×商品在庫量」の考え方と応用
 
 売上高を別の角度からみると、商品回転率と在庫高(量)で決まることがわかります。
 商品回転率は売れ行きの速さですから、足の速い商品または購買頻度の高い商品の手持ち在庫を増やせば、売上は増加します。

 つまり、売れ筋商品を的確につかみ、または死に筋商品を極力発見して退治し、売れ筋関連の補完商品を拡大することが商売繁盛のコツというわけです。
 上手な品揃えと在庫管理が、販売力を大きく伸ばすことを知らなければなりません。

 ●「売上高=坪効率×売場面積」の考え方と応用
 
売上高はまた、坪効率(坪あたり売上高)と売場面積とに分解することができます。したがって売上拡大のためには、坪効率を伸ばす努力とともに、売場面積を広げる工夫が大切です。

  業種業態や立地条件(繁華街、住宅地、ショッピングセンター)などにより坪効率 は異なりますが、限界に近いのであれば売場の拡張、支店の開設、空店舗の取得などを前向きに考えたいものです。
 坪効率は売場の使い方、陳列する商品量や演出方法、お客の店内誘導などにより改善することができます。また店員の守備範囲が広がれば、人の作業能率も向上するはずです。

 

ローコスト経営への挑戦 (経営力アップ②)

 第2回 ローコスト経営への挑戦 
 人間が心身健康で幸せな人生を願うように、企業もまた健全な体質で安定した経営を行い、会社と従業員がともに成長発展していくことが望まれます。

 景気の好不況にかかわらず健全な会社・良い経営の第一条件は、コストがあまりかからないローコスト経営の企業体質です。そこで中小商店の経営の仕組みを、低コスト・効率経営にどう変えていくのか、3つのコスト(費用)に着目して考えてみましょう。
第1のコストは売上原価(おもに仕入原価)、
第2のコストは営業経費(販売費および一般管理費)
第3のコストは支払利息(手形割引料を含む金融費用)

 業績の好不調は原価削減がカギ
●原価削減はストレートに利益増加に貢献Img_0002

  商店が生き残り繁栄するには 売上高を伸ばす、コストを節減する、粗利益を大きくする、資金の流れを円滑にする、4つの取組みに全力投球しなければなりません。
 
とくに売上拡大が難しい時代には、ローコスト経営に徹してまず売上原価の削減努力をし、ともかく必要な粗利益を確保することが大前提となります。

  
<粗利益の計算方法>

売上高-売上原価=粗利益(売上総利益)
流通業では粗利益≒付加価値となる 

 
なぜなら売上高は見かけの稼ぎ、実質の稼ぎは粗利益であり、これが人件費その他経費の支払い原資となるからです。


 
3つのコストの中では一般に売上原価の金額が最も大きく、しかもこの原価削減(コストダウン)はそのまま粗利益アップにつながるので、コストダウンの効果は絶大といえます。
 
例えば百万円の粗利益を稼ぐには、コストダウンなら同じ百万円ですみますが、売上高なら5百万円(粗利益率20%として)と5倍もの大幅な増加が必要となるのです。


●計画仕入れと在庫のロス退治でコストダウン
 
売上原価は期首と期末の在庫増減が関係しますが、その主体は仕入原価です。

  
<売上原価の計算方法>
・流通業の場合(損益計算書に示される)

 
売上原価=期首在庫┼当期仕入高-期末在庫(損益計算書)
・製造・加工販売の場合(製造原価報告書に示される)

 
売上原価=製造原価=原材料費┼外注費┼労務費┼製造経費 

 仕入価格の引き下げ交渉は、仕入先との力関係やつき合いが影響するので、商店側の熱心な説得力と取引条件が決め手となるでしょう。

 
一方、売れ筋商品の選択や適時適量の計画的仕入れ、現金割引の小口当用買い、有利な仕入先の開拓などを進め、常にコスト合理化を心掛ける姿勢が大切です。

 
 また過剰在庫にメスを入れ、金食い虫の不良在庫や商品ロスを退治することも、コストダウンには欠かせない大事な着眼点といえます。


 経費圧縮で営業利益を絞り出す
 ●経費は人件費・販売費・管理費に分けて改善策を練る
 
第2のコスト・営業経費は、さらに人件費、販売費および管理費に3区分すると、節減対策が進めやすくなります。
 
会社の決算書には、営業経費は「販売費および一般管理費」として表示されますが、その内訳となる多くの科目をただ漫然と眺めていても建設的なよい発想は浮かんできません。

 
そこで、各科目を3区分にまとめて集計し、経費全体の構成割合や過去3~5年間の増減傾向をつかめば、問題点と改善策が浮き彫りになります。
 
中小商店では人件費、テナント料(家賃地代)、減価償却費などが大きな営業経費とみられますが、経費は何でもカットするのではなく、「費用対効果」をよく勘案して手を打つことが大切です。


●人件費コストの合理化ポイント
 
やる気のある人材を確保し能力を発揮させるには、一人あたり人件費水準(賃金水準)を維持向上しながら、会社の人件費コスト負担をいかに軽くするかが、人件費対策のポイントとなるでしょう。
 
それには、少数精鋭主義で仕事の密度(中身・守備範囲・スピード)を高め、人の生産性と設備の稼働率を引き上げることが狙いどころとなります。

 
ところで営業経費の原資は粗利益ですから、粗利益(100)・人件費(4050)・販売費┼管理費(40)・営業利益(2010
)の配分が理想的と考えられます。
 
経験則では人件費の割合が60を越えると、赤字になるケースが多いようです。実際には、会社の個性や体質により千差万別ですから、独自の実績数字をふまえ従業員の意向を聞きながら、改善目標を決めることが先決でしょう。


●販売コストの合理化ポイント
 
売上高や利益増加に直接貢献する販売費はむしろ増やし、効果が不明確で予測できない費用は、中身をよく検討して削減することになります。
 
 一律カットはデメリットが多いので、マーケテイング活動に連動して削減目標を決め、各費目別に「予算化」するのが実践のコツといえます。


 
また現場の協力を得るために、現状の危機感を訴えるとともに明るい将来像を掲げて、当面のコスト削減の目標や方法を社内全体によく説明することが大切です。
 
各自が身の回りを見直して、現場から節約のアイデアや提案が出るようになれば、経費節減の運動は成功するはずです。


●管理コストの合理化ポイント
 
管理費は、事業規模や店舗施設に応じたテナント料、水道光熱費、リース料などが中心で、ひとたび店を構えれば必ずかかる費用が少なくありません。
 
ですから、事業計画を立てる段階で事前に厳しくコストを検討し、これを盛り込むことが肝要となるわけです。


 
人件費や管理費また販売費の一部は、売上高の増減に関係なく一定してかかる「固定的コスト」で、これは時間に比例してかかる「時間コスト」とも考えられます。
 
したがって、仕事のスピードアップを心掛け、時間を短縮して作業能率を上げれば、時間コストはそれだけ節約できるのです。


 経営体質のスリム化で金利負担を減らす
 
第3のコスト・支払利息はもとは借入金が原因ですから、「借金依存体質」からの脱出と「上手な借入れ方」を工夫する以外に方策はないでしょう。
 
金利は、汗をかき頭を使ってせっかく稼いだ営業利益を食いつぶし、事業の成果となる経常利益を圧迫するから問題となるのです。


  
<色々な利益とコストの関係>
粗利益(売上総利益)-営業経費=営業利益 
営業利益┼営業外収益(受取利息など)-営業外費用(支払利息など)=経常利益


   
借入金の返済原資は、自己金融力(留保利益と減価償却費の合計)によるのが健全な姿ですから、結局は、コストダウンと利益捻出による収益力の問題となり、高利益体質への転換に落ち着きます。
 
「儲けはあるが金がない」症状は、売掛金、底だまり在庫、設備の圧縮と有効活用を徹底して、経営体質のスリム化を進めることが肝心です。これにより社内財源を見直し、借金癖から立ち直る努力が必須の要件となります。

 
現在、金利水準は最低レベルにあり、銀行との交渉次第で金利は下がるケースもあるようです。
 
他方、各地の自治体や商工会議所・商工会による制度融資の斡旋は、利子補給や信用補完が利用できるので、中小企業には有利な助成制度といえるでしょう。

 

2012/04/11

販売効率を上げる(経営力アップ③)

3回 販売効率を上げる工夫 

● 『交差比率』で商品の販売効率をつかむ 
 
商品には流行商品や定番商品、新商品や成熟商品など色々なものがあり、また、儲けの大小も売れ行きのよしあしも様々です。よく売れるが利幅は薄いとか、儲けは大きいが売れるのに時間がかかる、という例はよくあることです。

 
商売の直接的な儲けは粗利益(売買差益)ですが、よく考えてみると、商品の回転(売れ行きの速さ)も間接的な儲けとなるのです。回転が活発になれば売上がふえ、商品調達のための資金循環もよくなります。
 その反対に、いくら儲けが大きくても商品の動きが遅ければ、それだけ在庫資金が滞留し資金効率がわるくなるでしょう。

 
そこで商品の販売効率を見るには、粗利益率だけでなく回転率もあわせてつかむことが必要となり、これが交差比率と呼ばれる経営指標なのです。
 
お客さまに喜ばれしかも儲かる品揃えに改善するには、自店で扱う商品の交差比率を品目別・部門別につかみ、それぞれ販売効率を比べてみることが欠かせません。

<交差比率で販売効率をつかむ>
交差比率(粗利益÷商品在庫)
   
=粗利益率(粗利益÷売上高)×商品回転率(売上高÷商品在庫)

●『売れ筋商品』と『死に筋商品』を分類する_0002_2
  数多くの商品が店に並んでいても、通常は2~3割のよく売れる商品で売上高の7~8割を稼いでいることが、経験則から大体わかっています。
 
つまり、残りの7~8割の商品はわずか2~3割の売上高しか上げていなわけで、ここに品揃えの問題点が潜んでいるということができるでしょう。

 
ですから、どの商品が稼ぎ筋でどれが死に筋なのか、はっきり把握して売れ筋中心の品揃えに変えていくことが、お店の魅力を高め客数や利用頻度をふやす基本となるのです。
 
店の計数管理が徹底していて、粗利益率と回転率の数字が正確につかめれば問題はありませんが、そうでなくとも、店主・店長による日常売場での経験と勘から、商品別に利幅の大小や売れ行きの程度は大体見当がつくはずです。

 
これを粗利益率の大・小・普通で3つのランクに、また商品回転率も同じく3つのランクに分け、花形商品から死に筋商品まで合計9つのタイプに分類するのが、『売れ筋分類』と呼ばれるクロス分析の方法です。
 
各商品が図表の9つのワク内に分類できれば、さらに販売効率のすぐれた花形・稼ぎ筋・儲け筋商品を中心としてその関連商品をどうふやすか。

 
他方、金食い虫の死に筋・眠り筋商品は一挙にカットすべきかどうか、などを検討しなければなりません。また一度に全商品を調べるのが大変なら、3分の1くらいに分けて、効率の悪い商品部門から取組むのもよいでしょう。
 
売れ筋分類のねらいは、第1に死に筋商品を早く発見して退治し、第2に売れ筋商品を正しくつかみ、その関連商品を考えながら品揃えを拡充することにあるのです。

『客層と用途別の発想』で品揃えを改善する 
 ところで、いくら商品が店に沢山並べてあっても、欲しい品物がなければ顧客にとっては何もないのと同じことです。

 
そこで、売れ筋分類により品揃えの中身を変えていけば、お客の目には店も商品も今までとは打って変わり、生き生きと見えてくるはずです。
 
また限られた売場面積を最大限に活かし、人と売場の生産性を高めるためにも、この考え方と手法は大変有益な方法といえます。

 
さて次に、売れ筋関連の商品をどうとらえ、買手の心をつかむ品揃えにどう充実していくかが、大事な課題となるでしょう。
 
そこで、ターゲットとなる客層と商品の用途を重視した、新しい品揃えの方法が考えられるのです。

 
つまり、各商品の素材別にメーカーや問屋に依存する従来の品揃えから、ねらう客層や用途に合わせた消費者本位の品揃えに、新しく変えていく必要があります。
 
それには商品を購入するお客の生活スタイルや、TPOの使い方をよく観察して、関連する商品分野を徐々に広げていく工夫が何よりも大切となります。

 
例えば、高齢者の日常生活に便利な衣料品、身回品、家庭雑貨などを選んで揃えれば、シルバー層対象のコンビニ店や専門の売場コ-ナーが考えられるでしょう。
 
またマニアックな雑誌やカタログ、趣味の玩具や身回品などを揃えれば、マニア向きの特設売場やホビー専門店の登場が可能となるはずです。

 
これまでのように一つの商品(業種)分野の中で、奥行きのあるタテ割り型の品揃えを追求する方法とは違い、複数の異なる分野から横断的に品揃えするヨコ割り型の商品組合わせ発想が、顧客の興味と関心を集める行き方として注目されています。_0001

魅力的なデイスプレイで販売効果を高める 
 
楽しい売場を演出して入店客の購買意欲を刺激するには、売れ筋商品と店の自慢商品などを組合わせて、話題性と新鮮味のあるテーマ陳列を考え、生活提案や販売促進を強化することが大切でしょう。  

 
花形商品や稼ぎ筋・儲け筋商品は、お客さまの最も見やすく選びやすい場所に陳列するのが原則です。
 
その一方、見せる商品は別として、売れ行きの思わしくない死に筋・眠り筋商品は展示スペースを縮小したり、陳列位置を格下げしたりするのが常道といえます。

 
こうした商品のデイスプレイ(展示陳列)も、売れ筋分類にしたがって合理的かつ効果的に進めることが、商品の販売効果を高め、売上を着実に増進する要因となることはいうまでもありません。

    

2012/04/12

在庫のムダを退治する( 経営力アップ④)

 第4回 『重点管理』で在庫のムダを省く

 
お店の現場で日常おこなう作業の流れとマネジメント(経営管理)の考え方とは、まったく逆の方向になります。
[実際の作業の流れ]商品の仕入れ⇒検品・値入れ⇒在庫・陳列⇒販売
[マネジメントの手順]販売計画 ⇒手持在庫の決定⇒商品の仕入れ

 
つまり、仕入れた商品をただ単に売るのではなく、売れる商品を計画的に仕入れるという発想の転換が、ここでは大事なポイントとなります。
 ま
た、在庫は販売のための準備ですから、在庫管理はつねに売上を念頭において進めることが大切です。

1 ABC分析で売上高の中身をつかむ
●売上高の大きい品目から順にならべるImg_0004
   
 何百、何千品目もある商品の動きを、手間ひまかけて全部調べあげるのは容易なことではありません。
 
そこで、最小限の人手と費用(コスト)で最大限の効果をあげる方法として、ABC分析による重点管理の手法がよく使われるのです。

 
まず、レジの記録や売上伝票から品目別に売上高をだし、金額の大きい順にならべることが先決です。つぎに各売上高の累計とその構成比を計算します。
 
すると事例のように、上位3品目で売上高累計5千6百万円、構成比70%となります。つまり10品目のうち3品目(品目数で30%)で、売上高全体の70%を占めることがわかるでしょう。

 
この例は『わずか2~3割の商品が売上高全体の7~8割を稼ぐ』という経験則(2対8の原則ともいう)を示しています。実際に何百・何千品目もの商品を分析してみても、この原則があてはまるのです。
 
ただし、季節変動の大きな商売では月別ではなく、少なくとも1年間の売上高をみる必要があります。

●3ランクにわけABC管理の順序を決める
 
そこで、上位3品目を「重点管理するAランク」、つぎの3品目を「普通管理のBランク」、残り4品目は「できれば管理するCランク」と3ランクに分類します。 
 
このうち上位2~3割の品目だけを重点的に管理すれば、売上高の大部分7~8割が管理できるはずです。

 
こうして、Aランクの基幹商品を最重点に管理し、在庫量は十分か、関連の新商品をどう開拓するかなどを検討します。
 
またCランクの下位4品目は、特別のもの以外は縮小するか中止し、売れ筋の関連商品や売りたい商品に入れ代えるべきでしょう。
 
問題は、上位ランクへ飛躍しそうな元気な戦略商品と、下位ランクに転落しそうな後退商品をよく見きわめることです。前者は販促を強化し、今後の売れ筋・稼ぎ筋に育てていかなければなりません。

●重点管理はいろいろな場面で活用できる
 
社会現象にはある種の片寄りがみられ、「少数割合の影響が大きい半面、多数割合の他への影響は小さい」という原則があります。ここから、簡便で効果的な重点管理の方法が編みだされたのです。

 
またビジネスの世界だけでなく、日常生活にもこの方法はひろく応用できるはずです。マネジメント分野では取引先の管理、コストの削減、品質不良やロス退治には大変役に立ちます。

 
ほかに家計支出や小遣いのスリム化、生活時間の上手な使い方にも、TPO(時・所・場合)別に金額・時間をだし、大きな項目順にならべて考えれば新しい発想や意外な着眼点がみつかるでしょう。

 重点管理で在庫のムダを改善する
●売上高の大きいものから在庫高をつかむ
 
在庫高(量)だけのABC分析もできますが、販売優先の考え方からすれば売上高の重点管理をもとに、Aクラス3品目の在庫から順次着手する方がベターといえるでしょう。
 
それには実地棚卸しか帳簿棚卸しにより、商品別に手持在庫高をつかむことが必要です。そして各商品の回転率(=売上高〈数量〉÷在庫高〈数量〉)をだします。Img_0005
 
事例では全商品の平均回転率8.1回転となりますが、基幹3品目のうち商品Ⅰは7.0回転でやや遅く(低く)、商品Ⅱ~Ⅲはそれぞれ9.9回転と12.0回転で良好なことが一目瞭然です。

 
また戦略商品とみられる商品Ⅳも回転は速い(高い)ことがわかります。そこで、商品Ⅰは売上高とのバランスを考えながら、過剰な在庫にメスを入れてこれを削減します。
 
商品Ⅱ~Ⅳについては、在庫の積み増しでさらに売上アップが期待されるので、徐々に商品在庫を増やすべきでしょう。

●回転率の目標を決めて適正在庫に改善する
 
お店の儲かる仕組みづくりには、こうした対症療法とあわせさらに根本的な体質改善を進めることが欠かせません。それには将来あるべきお店の姿を展望し、販売計画(マーケティング計画)を立てることです。

 
そしてその売上目標を出発点として、商品回転率の平均値と基幹・戦略商品ごとの目標値を決めることができます。
 
例えば、平均8.1回転(仕入れから販売まで45日)を5日縮めて9.1回転(40日)にするには、商品1は8.5回転、商品Ⅱ~Ⅲは現状維持、商品Ⅳは9.5回転等々と見通しを立てるのです。
 
なお適正在庫高=計画売上高÷目標回転率、また在庫回転日数=365日÷回転率で算出できます。

 
ところで在庫の増減は売上に影響するので、そのバランスをどう判断するかノウハウが重要となります。
 
一般に成熟商品は底溜まり在庫の削減、戦略商品は在庫の積み増しで売上アップなど、店頭の販売戦術と突きあわせて決めることになるでしょう。

 ●経営数字に慣れてマネジメント能力を高める
 図表では斜線の傾きが回転率ですから、平均回転率の傾斜より急角度の商品は良好、緩やかな商品は問題ありを示しています。
 
実はこうした面倒な計算も金額(数量)順のならび代えも、パソコンやPOSレジなら得意分野ですから即時にやってくれます。
 
情報の収集分析と活用は経営力アップの根幹であり、そのためにも情報機器を前向きに導入したいものです。

 一方、お店の体質改善には店主や幹部のマネジメント能力を高めることが根本で、少なくともポイントとなる経営数字には強くなる必要があります。
 
そこで実績や計画数字を検討するときは、店長・チーフの意見を組み上げながら、数字に慣れ親しむ訓練をかさねることが大切でしょう。

  

 

営業マ―ジンを稼ぐ(経営力アップ⑤)

 5回 営業マ―ジンをしっかり稼ぐ

 1 品選びと小まめな仕入れで繁盛する生活雑貨の店

 ●多彩な雑貨で夢と空想の売場を演出
 
S商店は、都会の住宅地にある元気印の商店街で、夫婦と20代の娘さんが15坪のファンシーショップを経営しています。
 
『オシャレな生活雑貨・おもちゃの夢の城』を店づくりのコンセプトに、インテリア雑貨、エプロン、アクセサリー、袋物、和洋食器類、キャラクター文具など、多種多品目の商品が華やかに店内を飾り、夢と空想の世界を演出しているのです。

 
買物ついでの地元主婦や学校帰りの中高生ギャル、勤め帰りのOLがおもなお客さんですが、1日の客数130人、客単価千3百円、年商5千3百万ですから、まずまずの繁盛店といえるでしょう。
 
 固定客ファンが多いとはいえほとんどが衝動買いで、流行や季節の変化、誕生日・バレンタインデイ・クリスマスなど、各行事により売れ筋が目まぐるしく変わるのがこの業態の特色です。

●繁盛の秘訣は裏方の商品仕入れとマネジメント努力
 
お店が繁盛している理由を探ると、次のことが挙げられます。
①店の経営方針ねらう客層がはっきり決まっている
②つねに流行情報のアンテナを張っている(来店客の行動、地元住民の生活スタイル、問屋の売れ筋情報、タウンウオッチング)
③頻繁に問屋街をまわり、自分の目と足を使って売れ筋トレンド商品をこまめに仕入れる
④品選びのセンスと女性の生活感覚を生かしてる(遊び感覚の店づくり、個性的なラッピング、誕生日・進学祝いなどに手書きのDM発送)
⑤販売目標と実績を毎日・毎週チェックし、売れる値ごろ商品の動きをよく研究している(粗利益の重視、商品回転の向上)

2 営業マ―ジンを正しくつかむ

●営業マージンは低めに押さえて経費を節約
 
いま余暇・趣味関連の市場は大きく成長していますが、その一方、繁華街やショッピングセンターにも強力な大手チェーン店が増え、競争はさらに激しくなると予想されます。

そこで当店では、
 店づくりのコンセプトに沿って地元密着の商売に徹する、
 独自に開拓した商品をやや低価格で提供する、
 商品の回転を順次高めていくことで、多難な時代に生き残りをかけています。

 
1コ千円で商品を仕入れ、5百円(原価の50%)の営業マージンを乗せて千5百円で売れば、マージン率は33%(売価に対し)となります。
 
業界の営業マージン率は3540%が普通ですが、この店ではこれを30%と低めに押さえてお客さんにサービスし、経営努力により諸経費を節約して営業利益を絞りだす戦略を立てました。
 
なお「マージン率」とは、売価基準の値入率のことで、商品1コあたりの粗利益率を意味します。


●原価基準と売価基準では値入れが変わる 

Img_0006 売価基準(外掛け)の30%は原価基準(内掛け)の43%ですから、この店では仕入価格に40--45%のマージン加算が目安となります。

 
問屋筋や同業者から上代の情報を集め、それより低めの売価を設定するよう心がけているのです。
 
商売がきびしくなると、どんぶり勘定では儲け損なうのは必定で、原価基準と売価基準の値入れの違いを正しくつかみ、営業マージンを間違いなく確保することが先決といえるでしょう。

 
通常、マージン率とか粗利益率とかいう場合は、原価基準ではなく売価基準を採用します。原価基準と売価基準の関係については、図表を参考にして考えてみてください。


●複合値入れ(マージン・ミックス)でしっかり稼ぐ
 時代の流行や商品鮮度のほか開発商品や定番品目など、商品はさまざまで値入れも一様ではありません。  
 また値下げ(マークダウン)して目玉商品をつくったりバーゲンセールを打つときも、全体の「平均値入率」がどうなるのか、あらかじめ考えておく必要があります。

 
表の計算例では平均値入率(マージン率)25.4%ですが、もしA商品を30%から20%に値下げすれば、平均値入率は21.7%となります。
 
これとは逆に、はじめに期待する全体の平均値入率を決めてから、順次各商品の値入れ配分をしていく方法が値入計画になるのです。

 
複合値入れの計算はやや面倒ですが、これはパソコンの得意わざですから、小さなお店でも情報機器を前向きに活用したいものです。Img_0007


3 目標数字と女性の感性で品選び

 
このお店では、客単価を千5百円に上げて年商6千百万円に、商品回転率を10回転から13回転に高めることを計画しています。
 
1日平均の売上約20万円とみて仕入予算は14万円(日商×70%)、手持在庫は4百70万円(年商÷13回転)が目標です。
 こうした具体的な数字を尺度として、夫人と娘さんの感性で「売れる商品」「売りたい商品」を厳選し、小口当用・現金仕入れを実行しているのです。

 
売上高、客数、客単価は毎日のレジ記録や伝票からわかりますが、在庫については、毎週1回は現物棚卸しをおこない商品の動きを正確につかんでいます。
 
毎日、売れ筋の把握や商品の補充、欠品の防止を心がけるとともに、曜日別・時間帯別の繁閑にそなえ、小回りを利かせて売場の模様代えを工夫することも繁盛のコツといえるようです。
 
また売上や在庫の季節変動にあわせて、仕入れを臨機応変に調整することは言うまでもありません。

 

借金経営から脱皮する (経営力アップ⑥)

 6回 脱借金経営へのチャレンジ 

 ●弱肉強食の企業淘汰時代が始まった

 
バブル崩壊の後遺症が長びくなか、日本版ビッグバンが本格化してきました。生き残るか消え去るか、きびしい企業淘汰時代への突入です。
 
銀行・証券はじめ昨今の相次ぐ大型倒産は、適者生存と弱肉強食による市場競争時代の幕開けを知らせました。大企業の裾野では、負債額1千万円未満の小規模倒産が日常的に頻発しています。

 
これから金融情勢は、銀行の貸渋りで一層きびしくなるでしょう。
 
融資先の選別強化、貸付金の早期回収、追加担保の要請などが進んでいます。業績不振や体質の弱い企業は、資金調達が難しくなってきました。借金頼みの経営は、いざの時には破綻をきたす心配があるから要注意です。

 
経済・金融システムの大転換点をむかえて、大企業だけでなく、中小企業の不況型倒産や連鎖倒産が多発することは間違いないでしょう。
 
わが社は本当に心配ないのか、取引先は大丈夫か、油断は大敵です。危険いっぱいのシビアな経営環境の到来を覚悟し、真剣に対処しなければなりません。

●借入限度から危険信号を察知する

 
経営破綻の直接の動機は、おもに手形不渡りか借入金の返済不能によるものです。そこで、借金はいくらなら心配ないのか、自社の借入限度をつかんで危険度を察知することが大切です。

 
ここでは、5つの基準と判断方法をご紹介します。1つの基準だけで甘い判定をするのではなく、複数の基準を併用して、客観的にきびしく検討する必要があるでしょう。
 
最も確実な判断基準は④自己金融力です。これは会社が自前で創りだした余裕資金ですから、この範囲内で返せる借金ならまず心配はありません

 
①借入金月商倍率は簡便法による目安です。営業利益の大小にもよりますが、月商の3カ月分までなら安全圏。6カ月以上は倒産街道行きですから、早急に打開策をとらなければ危険です。
  現在は超低金利時代なので、③金利負担力から判断すると借入限度はかなり多くなるはずです。 

 
②借入金/総資本比率⑤借入金/預金倍率をあわせて検討し、総資本(=決算書の負債・資本合計または資産合計)や預金合計と比べてみる必要があります。Img_0008




 ●脱借金経営めざし財務体質を強化しよう

 
小売業や飲食業は店頭での現金商売が普通だから、特別の事情がないかぎり、借金に頼る必要はないはずです。
 
元気印のお店なら現金による小口多頻度仕入れで、目標売上と利益達成に毎日努めるから、資金不足の心配はないでしょう。無借金経営のお店も少なくありません。

 
先行き不透明な景気動向が続くなかで、「金が足りなければ借りればよい」との、ドンブリ勘定的な安易な態度は改める姿勢が肝心です。
 
そして赤字不感症、自己資本充実への無関心、環境変化への恐怖感や消極姿勢からいち早く脱却することが先決ではないでしょうか。

 
それには財務健全化に向けて、次の4つのアプローチが大切です。 
資金不足の原因をはっきりつかみ、健全な資金運用をめざす
②資金回収・支払の流れを円滑にし、余裕ある資金繰りを心がける 
 不測事態に備えて資金調達力を確保する
 自己資金を蓄積し早く借金経営から抜け出す
 

 
お店の基礎体力を鍛え、脱借金経営で生き残るにはどうするか。さらに、体質改
善のための3つの実践ポイントを提案しましょう。
 付加価値志向と経費合理化で高利益体質の経営に徹する
 利益の内部留保と計画的な増資により自己資本を充実する
 事業資産を圧縮・活性化してスリムな経営体質に変身する

  こうした着眼点を参考にして目標を定め、お店の現状をふまえたうえで、早速チャレンジして欲しいものです。
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経営の原点に立ち返る (経営力アップ⑦)

 第7回 商人道への原点回帰で不況を勝ち抜く

 
出口の見えない平成不況が続き、ビジネス世界はいま、灰色の閉塞感が蔓延しています。身辺では、常識や道理に合わないことがあまりにも多く、経営の舵取りはますます難しくなっています。

 
こういう不安な時代を乗りきるには、場あたり的でなく商売の原点に立ち返って、根本から出直すことが必要ではないでしょうか。
 
それには、つい欲求不満や敗北感に傾きがちな自分を、確信づけ勇気づける精神的な支えが欠かせません。またねばり強く商売を続ける上で、頼れる経営指針をしっかり持つことが大切です。
  そこで先人の知恵に学びながら、現代に望まれる商人道や商魂について考えてみましょう。

 金がなければ知恵を、知恵がなければ汗を出せ
 
商人道の手掛かりはまず、江戸・享保年間に豪商たちの間で盛んにつくられた
『家訓』です。そしてそのお手本となったのが、井原西鶴の説教話「日本永代蔵」
(別名「大福新長者教」)でした。 

 江戸時代は平和な時代で、元禄期は政治、経済、文化が絶頂期、たいへん活気に

満ちた世の中でした。ところがその半面、貨幣価値は下落し、財政支出の増大、政

治と商人の癒着がひどくなっていきます。

 

 そのとき「元禄の好景気に浮かれ、放漫経営を続ければ、いずれ商店は傾く」と

警告したのが西鶴です。

 やがて元禄バブルは崩壊し、幕府の財政難を救うため将軍徳川吉宗は「享保の改

革」を断行。一転して緊縮財政とデフレ政策、綱紀粛正が始まり、多くの豪商が没

落していきました。

  そうした時代背景の中で、商家が代々家業を守り、商売の安泰維持のため、経営

者心得や従業員規律を定めたのが家訓なのです。家訓はいわば商家の憲法で、その

精神は明治・大正期の豪商、財閥の社是社訓に脈々と受け継がれ、商家繁栄の秘伝

となりました。

  
井原西鶴が説いた四つの商人道

『始末』 自己資金を稼ぐ正攻法として、まず始末が肝心。 始末とは、凡人なら誰もがしたいことを徹底的に我慢し、節約すること。  

『算用』 算用とは、勘定や財政の収支尻を合わせ、採算をとること。「入るを計って出るを制する」のが商売の基本。 

『才覚』 才覚とは知恵や工夫をこらし、機敏に商機をつかむこと。資金の回転を高め、利幅を大きくすることが大切。 抜け目ない商才で幸運に恵まれれば、短期間で長者(大金持ち)になれる。 

『信用』ー「よろず現銀売りに、掛け値なし」、薄利多売の現金商売に徹し、お客の大評判を集めた三井の新商法が商人の模範像。正直な商法で約束を守り、 お客や取引先の信用蓄積が何よりも大事。「店の生命は信用にあり」と説いた。 


 商人に好不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ
 
さて昭和年代に入り、事業経営の達人といわれた松下幸之助の経営哲学を見てみましょう。
 
松下精神の基本的な考え方は、「モノをつくる前に人をつくれ」でした。そして、自分の商売が世のため、人のためになるとの強い信念を持つことを教えたのです。また、水道の蛇口から水が流れ出るように電気製品を安く大量に供給して、庶民の生活文化に貢献したいと独特の「水道哲学」を披露しました。

 
今は成熟市場で個性化・多様化時代となり、生産者中心から生活者本位のマーケテイング理念へ変わっています。しかし、「他人の幸福のための商売」、「モノを売る前に自分を売れ」の哲学は、商人の心を支える不変の商人魂といえるのではないでしょうか。

 
その商売戦術訓31カ条(松下幸之助語録、昭和11年)からおもなものを抜粋し、わかりやすく編集しました。現在でも立派に役立つ実践的内容には、見習うべき点がたくさんあるはずです。

商売戦術10カ条  Img_0011
<店> 
1、店の大小より場所の良否、場所の良否より商品が大切 
2、店先を賑やかにせよ、元気よく立ち働け、活気ある店にお客は集る 

 <客>  
3、お客をじろじろ見るな、うるさく付きまとってはいけない  
4、紙一枚でも景品はお客を喜ばせるものだ、つけて上げるものがない時は笑顔を 景品にせよ 

 <奉仕>  
5、売る前のお世辞より売った後の奉仕が大事、これこそ永久のお客をつくる

6、商売は世のため人のための奉仕であり、利益はその当然の報酬である

  <資金> 
7、資金のなさを心配するな、信用の足りないことを心配せよ
8、資金の回転を多くせよ、百円の資本も十回転すれば千円となる

 <損益> 
9、常に今日の損益を考えよ、今日の損益を明らかにせずには寝につかぬ習慣とせよ
10、商人に好況不況はない、いずれにしても儲けなければならない 

● 商売は毎日が勝負、考えながら走ろう
 
最近は、新しい時代の企業理念づくりが盛んで、CI(コーポレイト・アイデンテイテイ)によるPR活動が普及してきました。
 
CIは、会社の特色を魅力的なキャッチコピーやロゴマークに表現します。そして、企業目標を鮮明に外部に訴えながら、あわせて社内の意識高揚をはかる効果的なイメージ戦略なのです。

 
今後は企業の社会的責任、情報化・国際化の意識、環境保全・バリアフリー対策など、斬新なテーマを盛り込むことが欠かせません。
 
それにはまず、5~10年先の店のあるべき将来像を描き、社員の生活設計もふくめて、文章化することが先決でしょう。
 
そして将来ビジョンに希望を託しながら、現状の危機感を正しく認識し、社内の結束と一致協力を要請するのです。

 
しかも中小企業では、経営者の人生観や経営センスがそのまま社員の行動基準となるので、率先垂範するリーダーシップが重要なことはいうまでもないことです。
 
経営ビジョンを明確にして社内のやる気を高め、科学的な計数管理で日常のマネジメントを徹底する。この二つの軸足で前向きに逆境をはね返そう、というのが今回の提言です。Img_0012

  商売は毎日が勝負ですから、今すぐできる小さなことから始める。そしてつねに考え、工夫する姿勢が肝心です。これが不況期を勝ち抜くための、再出発の原点といえるのではないでしょうか。
 
自分の個性と長所を確認し、新しい商人道を確立して欲しいものです。





 

 

 

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