バランスシートの仕組み(B/Sポイント講座①)
貸借対照表(B/S)の仕組みを知ろう!
●骨組みは資産、負債、純資産の三つ!
貸借対照表は、資産と負債、純資産の三つの関係から、一定時点における会社の財政状態を示した一覧表です。
一定時点とは、決算日(期末)のことで、表の肩にかならず「○年○月○日現在」と表示することになっています。
この表は、左右見開きの対照形式になっていて、左側(借方)「資産の部」には、事業に投下した資本をどう運用したか、右側(貸方)「負債・純資産の部」には、その資本をどう調達したかが示されています。
資本の調達は、自己資本(純資産)か他人資本(負債)ですが、その内容は、負債・純資産の内訳を見ればに詳しくわかります。
会社は、その資本で商品や設備などの資産を購入し、収益活動を行うわけですが、その資産の内訳は、資産の部に詳しく書いてあるのです。
バランスシートは財政状態の一覧表と前述しましたが、これを読めば、資本はどこから集めどう使っているか、その運用・調達状況が一目でつかめるわけです。
●流動資産と固定資産はどう違うのか?
資産には、短期の「流動資産」と長期の「固定資産」があります。
流動資産は、原則として1年以内に現金化する営業資産です。これはおもに現金・預金と売上債権(受取手形・売掛金)、棚卸資産(商品在庫・仕掛品)などをいいます。
固定資産は、資金が1年以上の長期にわたり固定化する資産です。これは機械設備と土地建物、差入保証金や長期有価証券が含まれます。
設備に投下した資金の回収には、長い時間がかかります。しかも、大きな資金が固定化しますが、これもまた事業展開には欠かせない資産なのです。
一方の負債は、他人から借用した資本なので他人資本ともいいます。
これは後で、貸主や債権者に返済しなければなりません。
これにも、原則として一年以内に返済する流動負債と、長期間に返済すればよい固定負債の二つがあります。
流動負債には、おもに買掛債務(支払手形・買掛金)と短期借入金が、固定負債には、長期借入金や社債などが含まれます。
一般的には負債は少ないほうがよく、同じ負債なら短期(流動)より長期(固定)のほうが、経営は安定するでしょう。
●自己資本が十分あれば会社は安泰!
自己資本は、自前の調達ですから返済不要で、長期に安定して使える資本ということができます。
これは、株式による払込資本(一般にいう資本金)のほか、資本剰余金や利益剰余金など内部留保による増殖資本を加えた純資産合計のことです。
資本金と自己資本を混同する人が多いのですが、資本金は、純資産合計(自己資本)の一部であることを覚えておきましょう。
ですから、自己資本は大きいほど会社は健全で、財務基盤は安定すると考えてよいでしょう。
逆にこれが少ない会社は、他人資本(負債)に頼ることになり、経営はそれだけ不安定といわなければなりません。
バランスシートのキーワードは、流動資産と固定資産、流動負債と固定負債および純資産合計の五つの数字です。
これを、3ケタくらいの大きな数字で読みとり、会社財務の全体像を大まかにつむことが先決でしょう。
貸借対照表がバランスシートといわれるのは、左側の資産合計と右側の負債・純資産合計の数字がかならず一致するからです。
これは、複式簿記(正規の簿記)の魔術ともいうべき優れた効用です。
この関係を踏まえ、資産から負債を引けば純資産の計算ができます。
・資産(B/S左側)=負債+純資産(B/S右側)
・純資産=資産-負債(これを資本方程式という)
≪ワンポイント・アドバイス≫
●大きな数字で全体像をつかもう!
売上げと利益主体の損益計算書に比べると、バランスシート(貸借対照表)には、資産や負債など見慣れない用語が多く、難しく思うかもしれません。
しかし、一覧表の大項目は資産と負債および純資産の三つ,中項目は流動資産と固定資産、流動負債と固定負債および純資産合計の五つだけです。
これを、頭から3~4ケタくらいの大きな金額で読みとり、資本の運用・調達の全体像をつかむことが大切なのです。
最初から細かい数字にこだわり、重箱の隅をほじるような態度は控えるべきでしょう。
まず、会社の特徴や目指す方向性を知ることが大切だからです。
流動資産と固定資産はどちらが大きいか。それは業種・業態など商売の形態(ビジネスモデル)とどんな関係があるのか?
自己資本(純資産)に対し、他人資本(負債)は多すぎないか。負債は短期(流動)と長期(固定)のどちらのウエイトが大きいか?
リース設備を利用すれば、固定資産と自己資本は節約できます。付属資料を見れば、リース資産や未払賃借料を調べることもできるはずです。
こうして、数値の大小と各項目を相互に比べ、その背後にある要因をいろいろ想像してみるとよいでしょう。
自社や競争企業の数値が具体的にわかれば、実際に検証することもできるのではないでしょうか?
●会計処理の方法は勝手に変更しない!
5つの中項目の中には、小項目(勘定科目)の数字がぎっしりと並んでいるので、はじめは圧倒されるかもしれません。
各科目の並べ方は、より早く現金化するもの、より重要な内容の順と考えてよいでしょう。
一般には、決算書作成ルール(会社法施行規則、財務諸表規則)の書式モデルを参考にして配列を決めています。
ただし会計処理は、一度採用した方法を継続するのが原則(継続性の原則)で、勝手に変更するのはよくありません。
決算の度に頻繁に変更すれば、株主や債権者など情報の受手側に誤解を招きやすいからです。
中項目は、小項目の各科目をグループ化し合計した数字です。
大きな数字の適否と原因をつかむには、羅列した小項目の中から、金額の大きい重要なものを押さえていけばよいのです。
例えば、表の左側(借方)の流動資産が多いなら、その原因は現金預金か売掛金か、それとも在庫(棚卸資産)にあるのか内訳に着目します。
右側(貸方)の流動負債の中身も、支払手形か買掛金か、または短期借入金か大きいものを見れば、資金繰り逼迫度や取引上の信用度が 一応は推測できるでしょう。
固定資産と固定負債、純資産合計についても、同じように大きい項目から小さい項目へとチェックしていけばよいわけです。

