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2008/12/20

決算書の活かし方(P/Lポイント講座②)

決算書を経営にどう生かすか?

●外部報告と内部管理のための会計情報

 決算書はもともと、株主や取引先、銀行など会社の利害関係者(ステークホルダー)と、税務当局など監督官庁へ事業成果を報告するためにつくられました。
  ですから相手が判断を誤らないよう、統一した書式と公正な会計ルール(会社法、税法、企業会計原則など)にしたがって、真実の情報を提供しなければなりません。
 重要な会計情報を故意に隠したり粉飾決算をしたりすれば、犯罪となるのは当然のことです。


 しかし今では、こうした外部報告用の「財務会計」(制度会計ともいう)とは別に、会社内部の経営管理に役立てようとする、「管理会計」が発達しています。
  事業環境がめまぐるしく変わる現代は、業績をいち早くつかみ、会社の進路を臨機応変に軌道修正する機会が多くなりました。
 そこで、経営判断に役立つ企業情報または管理のための会計情報として、これを前向きに生かす方向へ変わってきたのです。
 今では法令や規則とは別に、経営上の必要性に合わせて月次決算や週次決算、さらに部門別決算を行う会社が増えています。

●決算短信で業績をつかもう!

 上場会社の決算情報は、有価証券報告書(金融商品取引法)として株主や投資家に公開され、また監督庁(証券取引所、財務省)にも提出されます。
 また、経営の透明度を高めて株主の権利を保護するため、報告書の作成と情報開示制度には厳しいルールが決められているのです。
 株主向けの決算発表に使う「決算短信」は、分厚い有価証券報告書に代わる財務諸表の要約版といってよいでしょう。

 まず
冒頭で、事業の総括的な成果を公表し、営業収益と三つの利益(営業利益、経常利益、当期純利益)について当期と前期の比較、対前期増減率が示されます。
 さらに、会社のおもな経営指標もわかるので、業績の全体像と収益・利益の動向や、増減の理由が明らかになるのです。
 決算短信の内容としては、当期業績の概要と次期予想、貸借対照表と損益計算書、利益分配と配当政策および重要な会計方針、有価証券等の時価情報、事業別・地域別セグメント情報などが記載されています。

●決算書に慣れて会社の数字に強くなろう!

 IT化が進み、経理・財務の仕事は、帳票の記録係と金庫番から資金管理や経営管理の情報参謀として、その役割が変わってきました。   
 経営幹部は「木を見て森を見ず」にならぬよう、つねに数字で会社の全体像を掌握することが求められます。
 決算書は会社の成績表であり、企業内情報の宝庫です。会社のあらゆる実績数字がここに集約され、有益な経営情報がいっぱいつまっているのです。
 
 
新事業展開のリスクに耐えられるのか。リストラの得失はどうか、不採算部門から撤退すべきか。財務基盤は安泰か、会社は生き残れるかなど。決算資料から問題解決の糸口を見つけ、機敏に改革の手を打つことが欠かせません。
  こうした計数情報を読みこなし、自在に生かす知識と能力を身につけることが、今やビジネスパーソンには必須条件ということができるでしょう。
 勘定科目や仕訳など簿記の基本原理も、決算書の読み方からアプローチすると意外にやさしく体得できるはずです。

≪ワンポイント・アドバイス≫

●注記事項に注目しよう!

 決算書の末尾欄外や有価証券報告書の添付書類(付属明細書、注記表)には、会計処理の方法や数字の計算根拠について補足説明が行われるのが普通です。
 重要な会計方針としては資産評価と減価償却の方法、引当金の計上基準、消費税の処理方法などが明らかにされます。

 
また、貸借対照表の注記(表)には、固定資産の減価償却累計額やリース資産の内訳が示されます。
 中小企業でも、役員と会社間の債権債務、担保提供や保証(簿外債務)などの情報は注記するのが望ましいとされています。
 業績不振の会社が、苦し紛れに会計の処理方法を変更したりすれば、その本音がここに表れるので注意して読み取ることが大切でしょう。

●決算書の法定開示制度

 会社法の定めにより、計算書類は定時株主総会の承認後、遅滞なく公告しなければなりません。
 「直接開示」 → 株主総会の前に、株主に直接送付して会社情報を提供する
 「間接開示」 → (一定の条件を満たす)株主と債権者の請求により、営業時間内にいつでも書類を閲覧できる
 「決算公告」 → 官報,日刊紙またはインターネットに決算書の要旨を掲載する(インターネットでは要旨は不可、全文掲載が必要)

●様々な立場で決算情報を使いこなそう!

 上場企業の有価証券報告書や決算短信には、計数情報だけでなく多彩な定性情報が盛り込まれています。
 営業マンなら、セグメント情報から営業基盤と市場動向、投資計画から競争力と成長分野を探ることができるでしょう。
 企画マンなら、事業ビジョンと経営戦略を読み取り、長期計画やM&A戦略に生かすことも考えられます。

 また就職予備軍なら、会社の将来性や組織風土、賃金水準に着目し、株主・投資家なら当然のこと、利益配分の実績と配当の将来性に関心をもつでしょう。
 利用する側のさまざまな視点から分析と理解が可能なので、公開情報の内容については、拙著『損益計算書の見方が面白いほどわかる本』を参照して頂ければ幸いです。

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