決算書の仕組み(P/Lポイント講座①)
決算書とはどういうものか?
●決算書の2本柱は損益計算書と貸借対照表
会社はすべて、年に1度はかならず会計帳簿を締切り、経営活動の成果を「決算書」にまとめることが法律で義務づけられています。
この帳簿を締切る作業が「決算」であり、締切った日が「決算日」になるのです。
決算の対象となる期間は会計年度(事業年度)といわれ、これは会社の定款に明示されています。
通常の会計期間は1年間ですが、半期(6ヶ月)の中間決算や4半期決算をすることもあります。
決算書とは一般的な名称で、その作成ルールを定めた法令や規則により、会社計算書類(会社法)とか財務諸表(企業会計原則)、有価証券報告書(金融商品取引法)などさまざまな呼び方があるのです。
これらに共通する内容としては、損益計算書と貸借対照表(バランスシート)、株主資本等変動計算書および事業報告書の4つがあり、なかでも中心になるのは「損益計算書(P/L)」と「貸借対照表(B/S)」の2つといってよいでしょう。
●儲けのプロセスと財政状態がわかる
損益計算書(P/L:Profit & Loss Statement)は、1会計期間の営業成果を『収益(売上高)-費用(コスト)=利益(または損失)』という損益の流れ(フロー)としてとらえ、儲けの原因と結果を計算書にまとめたものです。
これを見れば、一定期間の営業活動や財務活動の成果、つまり、会社の稼ぎとコストおよび儲けがひと目でわかります。
一方の貸借対照表(B/S:Balance Sheet)は、会社が事業につぎ込んだ資金を、資産(資金の運用)と負債・純資産(資金の調達)にわけてとらえ、決算日の残高(ストック)を一覧表にまとめたものです。
これを見れば、期末における会社の財政状態がひと目でわかるので、とくに資金力や財務内容を知るには大事な資料となっています。
● 最終利益の配分は株主総会で決める
事業の成果である利益の分配は、期中または決算終了後に株主総会(または総会から委任された取締役会)で決めるのです。
税金を払ったあとの当期純利益は、株主配当や自社株購入(一種の株主還元)、社会還元などに分配され、最後の残りは内部留保(利益剰余金)として社内に蓄積します。
こうした剰余金の分配については、「株主資本等変動計算書」に詳しく表示しなければなりません。
また事業報告書は、会社の業務内容や財政状況に関連する重要事項を記載し、株主など利害関係者に実態を正しく説明するためのものです。
そのほか付属明細書は、「販売管理費明細書」や「製造原価報告書」など、計算書類の明細や勘定科目の補足説明をするものです。
なお大企業では、グループ企業を統合した「連結決算書」と「キャッシュフロー計算書(C/F)」が、上記の2本柱にさらに加わります。
キャッシュフロー計算書とは、現金・預金と有価証券(現金同等物)の収支を営業、投資、財務の3つの活動別に計算し、発生主義ではなく現金主義の立場からキャッシュの動きと増減を明らかにするものです。
≪ワンポイント・アドバイス≫
●決算は会社の法定義務
決算書に表れるのは会社全体の大きな数字ですが、それは現場の小さな数字の集大成にほかなりません。
ですから、各自の仕事や職場の数字と関連づけて読めば、背後の意味や具体的な実感がつかめるのではないでしょうか。
ところで、会社は事業活動をエンドレスに進めているので、業績を知るには、一定の期間(会計期間)を区切って収支を計算し、利益や損失と手持ちの財産をつかむ必要があります。
そこで、年に一度はかならず会計帳簿を締め切り、採算状況と財政状態を会計ルールに従って計算し決算書にまとめるのです。
中小企業と大企業では、会計基準と決算規定がかなり違いますが、ここでは前者を中心に基本的な説明をしながら、後者についても、随時要点を補足していきたいと考えています。
●当期純利益と純資産の増加は一致する
損益計算書には、帳票による日常取引の継続的記録から、業績の因果関係が「収益-費用=利益」のプロセスとして順に示されます。
貸借対照表には、期末の帳簿残高および現物棚卸から財産の手持ち高を誘導し、財政状態が「資産=負債+純資産」の一覧表として明らかにされます。
振替伝票や勘定科目の仕分けをご存知かと思いますが、会社では複式簿記(正規の簿記という)で会計処理をしています。
その結果、損益計算書の当期純利益(損益法)と、貸借対照表の純財産増加(期末純資産-期首純資産:財産法)が、不思議なことにピタリと符合するのです。
これはまさに、複式簿記の魔術というほかはありません。
この原理を武器にしてP/LとB/Sの両面からチェックすれば、粉飾決算の手口などもたいていは見破ることができるでしょう。
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